「不幸」という言葉のない国
アフリカ・ケニアの遊牧民ポコット族の食生活は、きわめて単純明快である。
主食は牛乳で、これは赤ちゃんの時から死ぬまで代わらない。それに1ヵ月ほどに1度の肉食。栄養不足の時は動物の血液を飲む。それに、少量の野生植物の実と野菜を食べる。1日の平均摂取カロリーは1200〜1800カロリーで、日本人の基礎代謝以下がふつうである。
彼らはとても明るく、均整の取れた健康美に満ちており、毎夜、月に向かって声高らかにうたい、踊る。自然そのものの中で生活しているから、視力は4.0もある。82歳の長老が岩肌を飛ぶように駆け、18歳の少女を「四番目の妻」と言う。原始的な生活をしている彼らのほうが、我々よりも遥かに健康である。
スワヒリ語には「不幸」という言葉はないという。文明とは無縁でありながら、彼らはとても幸福そうである。アフリカにいると、豊かさが幸せと結びつくかというとそうではない、貧しいことが不幸ではない、ということが実感できると、アフリカ生活25年の食物・栄養研究家の岸田袈裟さんは語る。
幸せの何たるかを見失い、不幸そうな顔ばかりの多い、我々日本人には考えさせられる話だ。